社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.260
おすすめ人 | この1冊 | こんな本です |
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2023.7.12 |
最後の医者は桜を見上げて君を想う 二宮敦人/著 TO文庫 |
地域医療支援病院である武蔵野七十字病院に勤める副院長の福原雅和と皮膚科の桐子修司。 天才的な外科医である福原は、どんな難病でも最後まで諦めずに患者の命を救おうとする。 その一方で桐子は「患者には死を選択する権利がある」と説く医院の問題人物で、「死神」という不名誉な仇名を付けられている。 ある日突然、死を宣告され残された日々が僅かとなった患者は、彼らと関わりながら何を決断するのか… 事故、殺人、自然死、戦争、自殺…誰にでも平等に訪れる死の種類は様々ですが、もっとも多い死因である病死は一番身近なものだと思います。 しかし、多少の不調があっても普通に生活している人にとって“死”とは、身近なようで身近ではない、いつか訪れる現実と理解していながら、ほとんどの人が“ずっと先の出来事”と考えているのではないでしょうか。 目の前に掲げられた仕事や勉強に取り組み、当たり前のように明日が来ると思っていた人が余命宣告を受け、本人だけではなく家族や友人の生活までも変えてしまい、死と向き合わなければならない葛藤の中で、“諦めずに戦いましょう”と鼓舞する福原医師と、“残された時間を有意義に使った方がいい”とすすめる桐子医師の意見は、どちらが正解ということはないと感じました。 生きること、死ぬこと、生き方、死に方に対する考えは人それぞれで、どういう形で終わりを迎えたいか、結論を出すのは自分です。 もし自分だったら、どうするだろう…読んでいる間に何度も頭を過ぎりました。 この本に描かれている患者や家族や医師の焦りが他人事に思えなかったのは、いつか自分にも与えられる試練だからだと思います。 目を背けたくなる問題ではありますが、この本を通して死に対する心づもりをしてみるのもいいかもしれません。 この作品以外にシリーズ化された「最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上・下)」があるので、合わせて読むことをオススメします。 出版者のサイト |