社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.244
おすすめ人 | この1冊 | こんな本です |
---|---|---|
2020.4.15 |
「ぼっけえ、きょうてえ。」 岩井志麻子/作 角川ホラー文庫 |
TV番組「5時に夢中」のコメンテーターで、変わり者?という印象が強い岩井志麻子のホラー作品です。 彼女はこの作品で第6回日本ホラー小説大賞や山本周五郎賞を、その後出版した他作品でも数々の賞を受賞しています。 「ぼっけえ、きょうてえ。」は岡山の方言で、「とても、怖い」という意味です。 なかなか覚えづらい言葉ですが、話が面白かったせいか、一度で覚えてしまいました。 短編の中の表題「ぼっけえ、きょうてえ。」は、顔の醜い女郎が寝物語で客に身の上話を始めるのですが、その内容は気分よく寝付けるどころか、段々とおぞましいものになっていきます。 誰にも恵まれなかった出生、双子の姉のこと、間引き専業産婆の母親の手伝い、父親との関係、両親の秘密、遊郭での出来事… 幸せとは全く無縁の凄惨な人生を、彼女は時々「ふふふ」と笑いながら話し進めていきます。 最初は興味本位で質問していた客の心は次第に恐怖心へと変わり、寝たふりをしますが、その寝顔を見た女郎は“客ではない他の誰か”に話しかけ始めます。 その相手とは… そして、醜い顔になった理由とは… 残酷な事実を語る女郎の口調は、“悲劇のヒロイン”として嘆くわけでもなく、どこか諦めているような、開き直っているような、それが当たり前だと思っているような。 狂気を感じます。 また、岡山弁でテンポよく話す描写は、読者が客(聞き手)になったような気分になり、聞くのが怖いけれども、怖いもの見たさで質問せずにはいられなくなる、そんな感覚でのめり込んでいく魅力があります。 短編でも満足度は高く、他の3作品も人間の怖さを書いていて、読みごたえがあります。 出版者のサイト |