社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.198
おすすめ人 | この1冊 | こんな本です |
---|---|---|
2014.12.17 |
甘い蜜の部屋 森 茉莉 筑摩書房 |
天性の美貌、愛らしさ幼さの中にある無意識の媚態、濃厚な香を持つ少女・モイラ。 彼女は次々と男たちを自分の蜜に溺れさせ、破滅させていく。 ただし、自分がそれに溺れることは決してない。 なぜならそれはモイラとその父・林作が作りあげた甘い蜜だから。 時代は大正時代の日本。 召使を何人もかかえられるほどの裕福な家庭の一人娘・牟礼藻羅(むれ・もいら)という少女が主人公の物語です。 彼女の幼少期、少女期、青年期が3部作で構成されており、男を虜にせずにはいられない彼女の美貌とその魅力にはまり、破滅していく男たちを描いています。 物語で特に重要なのがモイラと父・林作との関係。 親子の情以上だけれども恋人同士の愛とも違う、不思議な愛情で結ばれているモイラと林作の関係は、どんなに魅力的な男性も付け入れない程です。 そしてそれが男たちを破滅させる根底にあります。 モイラの魅力、性質がひたすら繰り返されるため文章が多少くどく感じられますが、それがまたモイラの匂い立つような魅力を強めていると感じました。 作者は森鴎外の娘・森茉莉。この作品の主人公同様、父から溺愛されて育ったといいます。 この父子関係が作品にも反映されているのは間違いなく、文豪の一面が見えるのもこの作品の面白いところではないでしょうか。 作者が10年かけて書き上げたというだけあり、とても読み応えのある小説でした。 出版者のサイト |