社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.124

おすすめ人 この1冊 こんな本です
HT
2012.11.1


「きいろいゾウ」

西加奈子

小学館
知りませんでしたが、来春、映画公開するのですね。最近、面白い作品はすぐに映画になりますね。

初めは、お気楽なフシギちゃんのお話かなあとあまり興味がありませんでしたが、読みながら美しい世界観にぐんぐん引き込まれていきました。武辜歩(ムコあゆむ)と妻利愛子(ツマりあいこ)という変わった名を持つ夫婦の純愛物語です。

世の中、不完全な人間ばかりの集まりですが、その中でも体が弱かったり、心が繊細だったり敏感だったり、ふつうは目に見えないものが見えたり聞こえたり、弱肉強食の競争社会ではとても生きにくそうな人間って、それでもたくさんいるものです。

実際は、人間、みんな本当は弱いものばかりの集まりなのでしょう。
この物語は、生きにくい人ばかりで構成されています。

そんな人々が、互いをいたわり足りない部分を補いながら、優しくも真剣に生きていく姿が描かれています。
強い人、成功した人は一人も出てきません。
事業に成功したお金持ちだって、ホントは弱さを抱えた「人間」として書かれています。

九州の片田舎の古い民家を舞台にしたこの小説、美しい月、たくましい夏の緑、虫たちや動物の声、人のいない夏の終わりの海、ひとつひとつのシーンが色彩豊かに鮮烈に浮かび上がってきます。
とても素敵な1冊でした。

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