社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.070

おすすめ人 この1冊 こんな本です
HT
2011.10.24


「水神」

帚木 蓬生

新潮文庫
江戸時代初期の九州・久留米藩。
筑後川を眼前にした豊かであるはずの農村地帯は、実際には高度が高く田畑に水が行き渡らず、百姓たちは年貢と日照りにぎりぎりの生活を送り続けています。

10mの谷底の川から桶で水をくみ上げ田畑に水を流す作業(打ち桶)を常に続ける村なのです。
雄大な筑後川を堰き止め、堤防に水門を作り、村々に行き渡る農業用水路を作り上げること、それこそが村を救う唯一の方法でした。

この夢の実現のために5人の庄屋が立ち上がります。
私財を投げ出し命をも賭けて、久留米藩へ工事の許可を願い出るのです・・・。
絶望的な状況にもくじけず使命を貫く庄屋たちと、生活を変えるために庄屋についていく百姓たちの姿が壮絶でした。
工事が許された後、工事の実行者は藩、成功した場合の名声も藩のもの、必要経費は全て庄屋持ち、失敗した場合の責任も庄屋のもの、そんな理不尽な取り決めがなされます。
実際、工事開始と同時に見せしめの磔台が5本(5人の庄屋の分)設置されます。
さてこの貧しい村々はどうなるのか。星★5つのおすすめ作品です。 

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