社員が選ぶ 最近読んだ1冊 NO.065

おすすめ人 この1冊 こんな本です
NTさん
2011.9.20




「破獄」

吉村昭

講談社文庫
昭和11年から昭和22年にかけて、四度も脱獄した無期懲役囚・佐久間清太郎の生涯を描いた(実話に基づいた)作品です。
脱獄の常習犯なので独房は厳重な管理がなされているのですが、いろんな策を練ったり、心理戦に持ち込んだりしながらするっと脱獄を果たします。

本書は背景や心理描写を細かく書いた小説ではありません。事実が淡々と書かれています。

時代はまさに戦争の只中。
刑務所を守る看守の不足、食糧難(囚人に与える食べ物が不足すると囚人の心が荒み事件が起きやすくなる)、空襲に備えての刑務所丸ごと疎開、疎開のための囚人の危険な移送、囚人たちの所内労働の実態など、この時代における刑務所が置かれた位置、抱えた問題が事細かに描かれています。

四度の脱獄を成し遂げた囚人・佐久間は、五度目に府中刑務所に収監されます。
府中刑務所での佐久間の変化が感慨深かったです。

ちなみに本書は新潮文庫の紙の本は絶版になっていますが、電子版で販売しています。
もちろん、多くの図書館では紙版の本を所蔵しており、借りることができます。

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